【 ここからメインエリア 】

ヒロとやんばるの空と海

-戦後独立国だった頃の明るいOKINAWA-

【第1話】(2)若水とりの正月朝

月の満ち欠けで判断する旧暦(=太陰暦)を使っていた昔の方が、春夏秋冬が月と一致し、暑さ寒さ含め季節感に敏感だったように思います。また、子供心にも正月は、旧と新があり、新正月は学校や役所の正月で仕方なく付き合いするものでした。


 

旧正月は、先祖(ウグァンス)やウヤファーフジとの付き合いで、正式に祝うものとの意識がありました。


戦争が終わったので、もう昔のような正月(旧正月)は古い不合理な習慣だ、と否定されたのです。ヒロたちの小学校の4年の頃から、新生活運動で、正月を贅沢にするな、2度の正月はムダだから新正月に一本化しよう、などという学校の先生や役場の偉い人たちのありがたいお触れもありました。


新正月という太陽暦が幅を利かしてから、ヒロたちにとって正月は胸が躍るようなことではなくなってきました。

大人も子供も、正月に夢が無くなったのですが、でもこの時期は未だしっかりと昔風の正月をどーんとみんなで祝っていました。

 

第二回 若水とりの正月の朝


 さて、正月の朝です。
「ヒロもう正月になったよう」というネエネエ(姉)の声が外から聞こえます。いつもは寒いので、布団からぐずぐずいってなかなか出ていかないのですが、今日は正月だったと思い直し、すぐにとびおきます。


まだうす暗い中を、正月の大事な水くみに近くの井戸まででかけます。
正月の朝一番にくんだ水はワカミジ(若水)といって、正月の一番にワカミジを使いそして飲むと、今年一年中健康で良いことがつづき、お年寄りは若返ることが出来る、とは大人たちはいつも言っています。

道をへだてた叔父さんの屋敷の井戸が、共同の井戸です。


ヒロの胸の高さもある円い井戸です。そのコンクリートの囲みには緑のつる草が生えて、深い井戸の底には水が揺れているのが見えます。井戸バタには、ヒロとネエネエのほかは、まだ誰もきていません。一番乗りです。


ネエネエは、早速井戸の底深くにロープにつながれた小さなバケツを落とし、腕を振ってさっと沈めてバケツいっぱい水をくみ上げ、家から持ってきた運び用のちょっと大きなバケツに移します。そして、その暖かい湯気の出るような水を、ネエネエと一緒にウンショ ウンショと両手で抱えて2度ほど休み休みしながら家まで運びます。

 くんできたばかりの井戸の水は、湯気がでるかと思うほどにあたたかです。台所の外側にあるヒロの胸ほどもある大きな水がめに、ネエネエに頼んで入れてもらいます。


水がめから柄杓で金だらいに水を張り、ヒロはまずはじめに顔を洗います。ワカミジで顔を洗うと、顔の色つやもよくなると、聞かされています。ヒロも、顔にぶつけた今日の水は、暖かくて柔らかな感じの水のようで、確かにいつもの水と違うような気がしています。

 顔を洗いおわるとすぐ、近くの浜に降ります。真っ直ぐに高く伸びているモクマオウの防風林を過ぎ、アダンの間の道をぬけると、夜目にも白い砂浜が左右に広がっています。浜木綿などのつる草を踏みしめながら歩くと、真正面の空が真東にあたります。


いつ見てもこの海はすばらしいとヒロは思っていますが、正月の今日の海は特別のように感じています。

右側からは黒ぐろとした姿の半島が、おおいかぶさるように海に突き出、それがだんだんと細くなり、ついには真東の水平線へとつながっています。その間に見慣れた小さな島々が、海の中に立ち並んでいます。


 うす明るい太平洋の水平線からまっ赤な太陽が、ちょこっと顔を出し、やがて上に昇るにつれて金色のシマシマを波に映(うつ)しだし、静かな音が波の中から聞こえてくるようです。きらきら輝く波のうねりで、みんなの顔も橙色(だいだいいろ)から黄色や白色に変わります。

 

 「初日の出だァ!」今日の東の空には、横にオビのような白い薄い雲が下の方を橙色に染めてたなびいているのが、23本あるだけです。誰かが「日本晴れだ!」と叫んでいます。

 

ヒロは、それを聞いて、ここは沖縄なので「オキナワ晴れ」が正しいのでは、といつも疑問に思っていることをつぶやきます。
でも、なにか良いことがありそうな、清々しい正月の朝です。

 

 家に戻ると、もう正月のごちそうが、食卓になったちゃぶ台に山のように盛りつけられています。そういえば昨日は、家でお父が大きな木の臼の中の白身の魚を杵で突いていたし、家の田んぼで取れたもち米を蒸して、お母がバーキ(竹製のざる)の上に並べていた。ヒロが寝ている間に準備していたのだ、と思い出した。

 

白いご飯にブタ肉、魚のてんぷら、厚揚げトウフ、ムーティ(もち)、コンブ、ちんぬく(サトイモの煮物)、紅白のカマボコなど、それにナカミーという豚の腸など内臓が一杯入った塩味の吸い物がどんぶりに入っています。

 

みんなヒロの好きな食べ物です。久し振りのソーグァチクァッチー(正月ごちそう)を見て、早くも口からはよだれがたれそうです。


住☆リフォームねっと (2011年3月19日 17:25) | コメント(0) | トラックバック(0)

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://cosmoj.co.jp/mt/mt-tb.cgi/214


コメントする


   | ヒロとやんばるの空と海トップ |


▲ページのトップへ戻る